【健康論文メモ #16】一人より、仲間と。減量に「人」が効くという研究

#14で、ひとつ気になる結果が出てきました。体重測定のメタ解析で、「誰かに報告する・見られる仕組み(アカウンタビリティ)」を含む研究のほうが、有意によく減っていたというやつです。

これ、読んだとき「あー」と声が出ました。というのも、私には今、同じように体重を落とそうとしている仲間がいるからです。人数も名前も、その人たちの数字も、ここには書きません。私のものじゃないので。ただ、いる。

で、正直なところ、その存在がけっこう効いてる感覚があったんです。気のせいかなと思って調べたら、ちゃんと研究がありました。今日はその話です。

結論を1行で

減量は、一人でやるより人と一緒のほうが続く。しかも差がつくのは「落とすとき」より「保つとき」。ただし、支え方の“中身”を間違えると逆に働くこともある。

論文1:友達と一緒に申し込んだ人は、維持できていた(Wing & Jeffery 1999)

この分野の古典です。デザインがきれいなので、そのまま紹介します。

  • どんな研究か……参加者166人を、「一人で応募した人」と「友人や家族3人と一緒に応募した人」に分け、さらにそれぞれを標準的な行動療法だけ行動療法+ソーシャルサポート戦略かにランダム割り付け。4ヶ月の治療と、10ヶ月時点の追跡です。
  • 結果その1……友人と一緒に応募した人のほうが、治療終了時点でも10ヶ月後でも減量幅が大きかった
  • 結果その2(ここがすごい)……治療の完遂率と、減量の維持率。
    • 一人で応募+行動療法のみ …… 76%が完遂、24%が減量を完全に維持
    • 友人と応募+サポートあり …… 95%が完遂、66%が減量を完全に維持

24%と66%。 ここまで開くんか、と思いました。しかも開いているのは「4ヶ月で何kg落ちたか」じゃなくて、「4ヶ月から10ヶ月のあいだ、落とした分を保てたか」のほう。落とすのは一人でもできる。保つところで人が効いてる。

論文2:グループでやるほうが、1対1より減った(Paul-Ebhohimhen & Avenell 2009)

じゃあ「グループでやる」形式そのものはどうなのか。これもレビューがあります。

  • どんな研究か……BMI28以上の成人が対象で、グループ形式と個別形式の両方を含み、追跡1年以上のランダム化比較試験を集めた系統的レビュー。5試験・11の比較群・のべ336人と、規模はそんなに大きくありません。
  • 結果……12ヶ月時点の体重変化は、グループ形式のほうが個別形式より有意に良かった(p=0.03)。とくに、金銭的な報酬を使ったものと、心理職が主導したものでその差が大きかった、と。
  • 限界……著者自身が書いています。参加者が女性に大きく偏っていて、心理職主導の介入が中心。男性でどうかは今後の課題だと。

私、男です(笑)。なのでこの結果がそのまま自分に当てはまるとは言えません。そこは正直に書いておきます。5試験336人という規模も、ものすごく強いエビデンスというわけではない。

論文3:ただし、「支えられ方」で結果が逆になる(Karfopoulou 2016)

ここが今日いちばん面白かったところです。素直に「仲間がいるといいね」で終わらせてくれない研究。

  • どんな研究か……ギリシャの MedWeight という登録簿。意図的に体重を10%以上落とした人を集めて、1年以上その減量を維持できている人289人と、リバウンドした人122人を比較。家族や友人からの「食事」「運動」に関するサポートを、検証済みの尺度で測っています。
  • 結果(意外)……リバウンドした人のほうが、受けているサポートは“多かった”。多ければいい、ではなかった。
  • 違いは中身だった……
    • 維持できている人が受け取っていたもの …… 褒められること、一緒に取り組んでもらうこと
    • リバウンドした人が受け取っていたもの …… 言葉での指示、励まし
  • さらに、サポートを受けた維持群では実際の食事内容も改善(エネルギー摂取量が低い等)していたのに対し、リバウンド群ではサポートを受けても食事は変わっていませんでした。
  • 結論……「指示的」なサポートより「肯定的」なサポートのほうが、維持には役立つらしい

ただし、これは観察研究です。 因果は言えません。「うまくいってない人ほど、周りが心配して口を出す」という順番の可能性も普通にある。そこは差し引いて読む必要があります。

それでも、心当たりがありすぎて笑ってしまいました。「がんばれ」と「こうしなさい」は、あんまり効かん。 効くのは「一緒にやる」と「できてるやん」。言われる側で考えても、たしかにそうやなと思います。

論文4:太るのも痩せるのも、人づたいに広がる(Christakis & Fowler 2007)

有名なやつなので、軽く触れておきます。

  • New England Journal of Medicine に載った、大規模な社会ネットワークを32年にわたって追跡した研究。肥満が、社会的なつながりのなかを広がっているように見える、と報告したものです。
  • ただし、この研究は方法論をめぐって批判もあることで知られています。「友達が太ったから自分も太った」のか、「似た人同士が友達になっただけ」なのかを分けるのは、そもそもすごく難しい。

なので私は、これを根拠として使うつもりはないです。ただ、「食べる」も「動く」も、そもそも人とやることが多い行動なんですよね。誰と晩ごはんを食べるか、誰と休みの日を過ごすか。それが体に出るのは、まあ、そらそうかと。

自分への応用

私が今、仲間から受け取っているのは、たぶん Karfopoulou の言う「一緒に取り組んでもらう」側です。誰かが今日も測ってる。それだけで、自分も乗る気になる。 説教も指示も一切ないのに、これがいちばん効いてる。

で、#14とつながります。仲間が効くのは、記録に「見られてる」がくっつくからじゃないかと思ってます。一人で書いたノートは、書かなくても誰も困らない。誰かが見てると、書かない日が気になる。それだけの違いなんですけど、Madiganのメタ解析でアカウンタビリティに有意差が出てるのを見ると、この「それだけ」がけっこうデカいらしい。

このブログも、私にとってはたぶん同じ役目をしてます。読んでる人の顔は見えないけど、書くと決めてるから測る。順番が逆でも、結果として乗れてるならそれでええかなと。

逆に、自分が誰かに何か言う側になったときの話も。「がんばれ」と「こうしたほうがええで」を連発しないようにしようと思いました。効きにくいうえに、言われた側はしんどい。そのかわり「今日も測ってるやん」を言う側でいたい。だいぶ地味ですけど、研究がそっちを指してるので。

そして、これは繰り返しておきます。仲間のことは書きません。 体重も、状況も、うまくいってるかどうかも。人の数字は、その人のものです。

まとめ

  • 友人と一緒に申し込んだ群は、完遂率95%・維持率66%。一人+標準治療は76%・24%(Wing & Jeffery 1999)
  • グループ形式は個別形式より、12ヶ月時点の体重変化が有意に良かった(p=0.03)。ただし女性中心・5試験336人と規模は小さい(Paul-Ebhohimhen 2009)
  • サポートは量より中身。「褒める・一緒にやる」は維持側、「指示する・励ます」はリバウンド側に多かった。ただし観察研究で因果は言えない(Karfopoulou 2016)
  • 肥満が社会ネットワークを伝わって見えるという有名な研究もあるが、方法論には批判もある(Christakis & Fowler 2007)
  • 効いてる本体はたぶん「見られている記録」。#14とセットの話

一人でやりきれる人はそれでいいと思います。私はどうも一人やと止まるタイプらしいので、素直に人の力を借りることにしました。72日止まってた人間が言うと説得力ありますね(笑)。

出典

※この記事は、上の論文・レビューをもとに、私なりに噛み砕いたメモです。数値はあくまで研究上の目安で、効果には個人差があります。観察研究からは因果関係は言えません。医療アドバイスではありません。

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