【健康論文メモ #15】自分に必要なカロリーの出し方。BMIと、ミフリン・セントジオール式

前回(#14)で「記録が効く」という話を書きました。じゃあ、何を目標にして記録するのか。ここが抜けてると、数字を並べただけで終わってしまいます。

白状すると、私はずっと「なんとなく1,500kcalくらいかな」でやってきました。根拠、ゼロです。誰かのブログで見た数字か、アプリが最初に出してきた数字か、それすら覚えてない。

で、今日はその「なんとなく」を、いっぺん式にしてみる回です。先に強めに言っておきますけど、これは「この数字にすれば痩せます」という話ではありません。 あくまで推定値を出す方法の話。ここを勘違いすると事故るので、最初に置いておきます。

結論を1行で

体重・身長・年齢から「安静時に使うカロリー」を推定して、動いた分の係数を掛ける。それが1日の必要量の“推定値”。当たっても外れても±10%くらいはずれる前提で使う。

まず、BMIで立ち位置を見る

入口はここ。計算はめちゃくちゃ簡単です。

  • BMI=体重(kg) ÷ 身長(m) ÷ 身長(m)
  • 例:体重68kg・身長170cm(=1.7m) なら、68 ÷ 1.7 ÷ 1.7 = 約23.5

区分は、一般的に使われているのがこのあたりです。18.5未満=低体重/18.5以上25未満=普通体重/25以上=肥満(日本の基準)。国際的な基準(WHO)だと25以上が「過体重」で、30以上を「肥満」と呼ぶので、日本のほうが線引きが厳しいんですね。ここ、海外の記事を読むときに混乱するポイントです。

で、BMIの限界も一緒に覚えておいたほうがいいです。BMIは筋肉と脂肪を区別しません。 身長と体重しか見てないので当然です。だからこれは「自分がどのへんにいるか」を大づかみに知るための入口であって、これで健康かどうかが決まるわけじゃない。

安静時の消費量を推定する:ミフリン・セントジオール式

ここからが今日の本題です。

  • どんな式か……1990年に American Journal of Clinical Nutrition に載った論文で提案された式。健康な498人(男性251人・女性247人、19〜78歳)の安静時エネルギー消費量(REE)を間接熱量測定で実測し、体重・身長・年齢から回帰分析でつくられています。標準体重の人264人、肥満の人234人が含まれています。
  • 式(簡略版・論文に載っている形)
    • 男性:REE = 10×体重(kg) + 6.25×身長(cm) − 5×年齢 + 5
    • 女性:REE = 10×体重(kg) + 6.25×身長(cm) − 5×年齢 − 161
  • ついでの豆知識……同じ論文で、1919年につくられた古いハリス・ベネディクト式は、実測より約5%高く出たと報告されています。昔の式でざっくり出すと、必要量を多めに見積もることになる。

ためしに、身長170cm・体重68kg・45歳の男性で入れてみます。
10×68 = 680、6.25×170 = 1062.5、−5×45 = −225、+5。
合計 約1,522kcal。これが「一日じゅう寝てても使う分」です。

この式が“いちばんマシ”という検証もある(Frankenfield 2005)

「で、その式は当たるん?」という話。ここもちゃんとレビューがあります。

  • 臨床でよく使われる4つの式(ハリス・ベネディクト/ミフリン・セントジオール/Owen/WHO・FAO・UNU)を比較した系統的レビュー。
  • 結果、ミフリン・セントジオール式が、実測値の±10%以内に収まる人の割合がもっとも高く、誤差の幅ももっとも狭かった。標準体重の人でも肥満の人でも、です。
  • ただし、著者はしっかり釘を刺しています。 個人に当てはめたときには「無視できない誤差と限界」が残る。とくに高齢者や、検証データが少ない民族集団では、式の精度をそのまま信じるべきではない、と。正確に知りたければ間接熱量測定で実測するしかない、というのが結論です。

つまり「いちばんマシな推定式」であって、正解ではない。±10%って、1,500kcalなら150kcalです。おにぎり1個ぶん平気でずれる。この幅は頭に入れておいたほうがいいと思います。

活動係数を掛けて、1日の必要量にする

REEは寝てるだけの分なので、ここに動いた分を掛けます。よく使われている係数はこのあたり。

  • ほとんど動かない(デスクワーク中心)…… 約1.2
  • 軽い運動を週1〜3回 …… 約1.375
  • 中程度の運動を週3〜5回 …… 約1.55
  • 激しい運動を週6〜7回 …… 約1.725

さっきの1,522kcalに1.375を掛けると、約2,090kcal。これが1日の必要量の推定値、ということになります。

ただし、ここは正直に書いておきます。 この活動係数、私が調べた範囲では、ミフリン・セントジオール式のように「この論文で検証されました」ときれいに紐づけることができませんでした。実務で広く使われている“慣習的な目安”という位置づけです。なので、この数字は論文の裏づけがあるものとして扱わないでください。 私は目安として使いますが、根拠の強さは式本体とは全然ちがいます。

で、どれくらい赤字を作るか

推定した必要量から引いていく、という話になります。ここで私が一番気をつけたいのは、引きすぎないことです。

減量の下限としてよく目にするのが「女性は1日1,200kcal、男性は1,500kcal を下回らない」という目安。ネットでも本でも本当によく見ます。ただ、これも私は一次資料を確認できていないので、「広く言われている目安」として置いておきます。

なんでそんなに「下げるな」と言われるのか。その中身は次の#17でまるごと扱います。ざっくり言うと、減らし方をきつくするほど、落ちるものの“中身”が変わってしまうという話です。

自分への応用

自分の数字を入れてみて、いちばん納得したのはここでした。

式に体重が入っている=体重が減ると、必要量そのものが下がる。

当たり前のことなんですけど、これ、体感とちゃんと一致するんですよね。同じメニューを食べ続けてるのに、ある時期からぱたっと減らなくなる。あれは根性の問題でも代謝が壊れたわけでもなくて、単に式の答えが小さくなって、赤字が縮んでるだけ。10kg減ったら、この式の上では100kcal減ります。

だから停滞したときの選択肢は、「もっと食べない」だけじゃない。分母(動く量)を増やすほうにも同じだけ道がある。私はNEAT(#10)でさんざんその話を書いたので、そっち側に振ります。

もうひとつ。これを機に「なんとなく1,500kcal」はやめます。やめますけど、出てきた推定値を絶対視もしません。 ±10%ずれる前提の数字なので、最終的な答え合わせは体重計です。式は出発点、記録が答え合わせ。#14と#15はセットでした。

※持病がある方、薬を飲んでいる方、妊娠・授乳中の方は、この式で出した数字をそのまま使わず、必ず主治医や管理栄養士に相談してください。私は素人で、ここに書いているのは論文を読んだメモです。

まとめ

  • BMI=体重(kg)÷身長(m)²。日本の基準では25以上が肥満、WHOでは30以上。筋肉と脂肪は区別されない
  • ミフリン・セントジオール式(1990年・実測498人)で安静時の消費量を推定できる。男性は「10×体重+6.25×身長−5×年齢+5」、女性は最後が「−161」
  • 系統的レビューでは、この式が実測の±10%以内に入る割合がもっとも高い。ただし個人に当てはめると誤差は残る(Frankenfield 2005)
  • 活動係数(1.2〜1.725)は慣習的な目安で、論文の裏づけを私は確認できていない
  • 体重が減れば必要量も減る=停滞は「もっと減らす」より「もっと動く」でも崩せる

数字を出したところで急に痩せるわけじゃないんですけど、「なんとなく」でやってた部分に一本、線が引けた感じはあります。あとはいつも通り、測って、書くだけです。

出典

  • Mifflin MD, St Jeor ST, Hill LA, Scott BJ, Daugherty SA, Koh YO. A new predictive equation for resting energy expenditure in healthy individuals. Am J Clin Nutr. 1990;51(2):241-247.
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/2305711/
  • Frankenfield D, Roth-Yousey L, Compher C. Comparison of predictive equations for resting metabolic rate in healthy nonobese and obese adults: a systematic review. J Am Diet Assoc. 2005;105(5):775-789.
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15883556/

※出典についての正直な注記:この記事のうち、BMIの区分活動係数(1.2〜1.725)「1,200kcal/1,500kcalを下回らない」という下限の目安の3つは、特定の論文に紐づけていません。広く使われている一般的な目安として書いています。数字の重みが違うので、区別して読んでください。

※この記事は、上の論文をもとに、私なりに噛み砕いたメモです。式で出るのはあくまで推定値で、体格・筋肉量・持病・服薬などで実際の必要量は変わります。医療アドバイスではありません。

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